地理・歴史と書いてきました。
やはり公民についても触れる必要がありますね。
1.そもそも公民が学習しづらいのはなぜか?
ずばり言いましょう。
興味が持てないからです。
子どもたちは選挙権がありません。
新聞も読まなければテレビのニュースも見ていません。
世の中の動きについては無関心です。
さらに、公民分野で出てくる用語は日常とかけ離れた特殊なものばかりです。
象徴・統帥権・公共の福祉・三審制・三権分立・権力の濫用・・・・
別に知らなくても理解できなくても、日常生活には何の支障もありません。
そもそも家庭で政治についての話題が出ることは皆無です。
つまり、子どもたちにとっての公民分野というのは、
よくわからない言葉が使われている自分には関係がなく興味も持てない分野
なのです。
それでも、学校や塾ではいろいろ教わります。
社会保障制度、大切です。年金保険や介護保険制度についても学びました。少子高齢化が深刻なんだそうです。
でも、そもそも少子化って何? 子どもなんて自然に生まれてくるんでしょ?
少子高齢化に関して、中国の一人っ子政策やフランスの婚外子割合について講義をしていると、必ず出る質問(それもなぜか男子生徒から)がありました。
「先生! 一人っ子政策っていうけど、子どもの人数なんて制限できるわけないじゃん!」
「婚外子って何? だって結婚しなくちゃ子どもなんて生まれないでしょ?」
そうしたことをきちんと指導されてもいないのに、「発展途上国の人口爆発」「先進国の少子化問題」を考えさせることなど無理に決まっていますね。
2.公民分野を教えるときの鉄則
子どもを子ども扱いしない
これは、教師側からも保護者側からも最重要なことです。
公民分野とは、まさに現在進行形で動いている社会情勢についての理解を深める学習なのです。
例えば、連日アメリカの大統領選挙のニュースが流れています。
なぜトランプ大統領が人気なのか?
なぜトランプ大統領ではいけないのか?
アメリカの分断を助長するってどういうこと?
アメリカ大統領選挙のしくみは?
これらの疑問について、正面から向き合い、子どもと一緒に考えていく。そうしたことから逃げないことが重要です。
まだアメリカの政治ならやりやすいのかもしれません。でも、これが日本の政治だったらどうでしょうか?
「まだ子どもだから政治についてはわからなくてよい」
「大人になれば自然にわかってくるはず」
「政治は難しいから」
こうした態度で子どもと接する限り、永遠に公民分野は理解できないことでしょう。
3.具体的な学習法
(1)民主主義を徹底的に理解する
民主主義という政治制度を、その成り立ちから現状にいたるまで徹底的に理解する必要があります。
「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば」
チャーチルの有名な言葉ですね。
イギリスらしい皮肉のきいた言葉ですが、本質をついていると思います。
人類はなぜ民主主義に至ったのか
民主主義の本質はどこにある?
多数決は民主主義なのか
主権って何だろう
フランス人権宣言・アメリカ独立宣言にこめられた思い
正直いって難しいです。
大人だってはっきりとはわかっていないのですから。
でも、ここから逃げるわけにはいきません。
子どもたちには、理想主義としての民主主義を理解してほしいと思います。
(2)日本国憲法を学ぶ
まずは前文の丸暗記から入りましょう。
前文には憲法の方針が述べられています。
丸暗記にまで至らぬまでも、一字一句おろそかにせず、意味を理解してほしいのです。
その次は、第1章(天皇)、第二章(平和主義)へと進みます。
さらに基本的人権も学びましょう。
憲法の役割も大切ですね。
生徒達は簡単に「憲法は法律の中の法律」と理解しています。
それは決して間違いではないのですが、理解は浅いと思います。
本来憲法というものは、13世紀イギリスのマグナカルタ以来、国家権力を縛る足枷として誕生した経緯があります。
こうした歴史も合わせて学ばなくてはならないのです。
(3)政治のしくみについて学ぶ
国会・内閣・裁判所の関係、三権分立について理解しましょう。
「権力の集中と濫用を防ぐ」とすぐに言えるようにするのです。
また、選挙についての理解は重要です。
民主主義にとって最重要のイベントが選挙だからです。
実際に入試問題でも頻出項目です。
(4)現代社会の問題について理解する
実際の入試で点数が分かれるのはこうした部分です。
現代の社会をとりまく問題についてどれだけ理解しているのか。
こればかりは、日ごろの学習姿勢や家庭での会話が重要です。
少なくとも新聞の1面に載っているような出来事については、話題にすべきでしょう。
最近、紙の新聞をとっていない家庭が増えていますね。新聞の発行部数も激減しています。
ネットニュースで事足りる、そういうことなのでしょう。
「事足りる」と考えている時点で、大人失格ですね。
ネットニュースは新聞報道(やテレビ報道)の代替品にはなりえません。それはどうしてなのか?
ここまで考察できるようにしていきたいと思います。