
※この記事の初出は2024.07.04です。2025.11.13にUPDATEし、有料記事化しました。
今回は選挙の問題について考える授業です。
子どもたちは、大人が考える以上に選挙に興味を持っています。選挙が近づくと、通学路に見慣れぬポスター掲示板が現れたり、駅前で演説がおこなわれていたりするからでしょうか。この機を逃さず、選挙について考えさせることにします。
例によって登場人物は麻布志望の3人組、タロウ・ワタル・ゲンタ(仮名)です。実際の生徒・授業ではなく、過去の授業を再構成したものです。
選挙ポスター
タロウ:先生、みんなもちょっと来て! 僕、すごいの見つけちゃった!
ワタル:すごいって何?
タロウ:来ればわかるって。すぐそこだから。
一同路上に出る。
タロウ:ね、今回の選挙って、立候補者多くない? ポスター掲示板が凄いことになってるんだけど。
ゲンタ:ほんとうだ! しかも同じ政党なのかな? おんなじデザインのポスターで掲示板が乗っ取られてるみたい。
ワタル:ねえ、先生、選挙って誰でも立候補できるんだよね。僕も立候補してみたいな。
ワタル:その前に投票してみたい!
私:よし、それじゃあ教室に戻って選挙について考えてみるか。
投票率
私:まずはこのグラフを見てもらおう。

ワタル:これは?
私:これは、戦後の衆議院総選挙の投票率をまとめたグラフだ。そしてもう一つ、参議院選挙の投票率のグラフがこれだ。

タロウ:ねえ、どっちもずいぶん下がってきたね。
ワタル:本当だ。昔は70%以上もあった投票率が今じゃ50%くらいになってるね。
ゲンタ:ちょっと待って。先生、投票率って、選挙に投票に行く人の割合だよね?
私:そうだ。投票する権利のことを選挙権って習っただろ。昔は20歳以上、今は18歳以上に選挙権がある。
ゲンタ:ってことはさ、せっかく選挙権があるのに投票に行かない人がこんなにいるってこと?
皆:もったいない!
タロウ:そんなに選挙権がいらないなら、僕にくれればいいのに。
ワタル:そうだよ。僕だって、早く選挙で投票したいって思ってるんだからさ。
私:先生もそう思うな。選挙権拡大の歴史って勉強しただろ? 今18歳以上の国民全員に選挙権があるのは、尾崎幸雄や市川房江等が苦労して戦って勝ち取って来た成果だからな。それを使わないなんて、もったいないを通り越してあきれてしまう。捨てるくらいなら、一所懸命選挙のことを勉強している君たちに分けてあげればいいと思うぞ。
ゲンタ:先生の力で何とかできない?
私:残念ながら私にはそんな力は無い。
投票率の下がる理由
ワタル:ねえ、なんでみんな選挙に行かないの? 投票率が下がるってことは、選挙に行かない人が増えているってことだよね。
私:そうだな。それについてみんなに書いてもらおうかな。
タロウ:いきなり! ワタルが変なこと言うからだよ。
私:ワタルは悪くはない。人のせいにしていないで、書きなさい!
タロウ:いちおうできたけど。
「選挙の投票日が決められている。したがってその日に仕事がある人は投票に行けないため、投票率が下がった。」
ワタル:それ変だよ。それだとまるで、どんどん仕事が忙しい人が増えているってことになるよ。
タロウ:だってそうだろ? どう考えても昔より今のほうが忙しいに決まってるじゃないか。
ワタル:それはたしかに高度経済成長期ならわかるけどさ。今はワークライフバランスのほうが重視されてると思うよ。それに選挙は日曜日でしょ。
タロウ:日曜日に仕事をしている人だっていぱいいるじゃないか。ね、先生?
私:私に振るな。まあ先生も、日曜はいつも授業で仕事をしているな。
タロウ:ほら、仕事で投票できないんだよ。あれ? それじゃあ先生、いつも棄権?
私:そんなことはない。ちゃんと事前に投票を済ませている。
タロウ:しまった! それを忘れてた!
私:期日前投票制度だね。公示日か翌日から選挙前日まで、役所に行けば投票できるんだ。役所以外にも、ショッピングモールや駅前に臨時の投票所を設けるケースもあるようだね。そのせいか、期日前投票する人は増加していて、前回の衆議院選挙では有権者の20%以上が期日前投票したそうだよ。
タロウ:それだと僕の答案は点数にならないかな。
私:そうだな。
ワタル:あ、それだと、僕の答案もダメかもしれない。
「選挙当日に雨が降ると投票に行かない人もいるだろうし、晴れていれば逆にどこかに遊びに行く家庭も多いため、投票率が下がる。」
私:自分でダメな点に気づいたかな?
ワタル:期日前投票のことをすっかり忘れてたんだ。
タロウ:それに、雨でも晴れても投票率が下がるって都合が良過ぎる解釈だよ。
私:他にも問題があるが気づく人はいるかな?
ゲンタ:投票率の変化の原因が書かれていない気がする。
私:その通りだ。仮に雨だと投票率が下がるとしたら、年々投票の日に雨が降ることが多くなるというデータが必要になるね。
ゲンタ:僕はいちおう変化の原因を考えてはみたんだけど。
「昔に比べて家庭内での夫婦の会話が減ってきたのが原因だ。選挙は日曜日に行われるビッグイベントである。どの党、どの立候補者に投票するかは、大きな問題として夫婦で話しあい、その上で連れだって投票所に出かけるものだった。しかし、昔と比べて働く女性も増えたため、そうした夫婦の会話の機会がめっきり減り、それとともに家庭における投票の重要性が薄れてきたことが原因である。」
タロウ:なんだかすごい解答だ。
ワタル:本当だよ、意味もなく説得されそうになる。
私:だいぶ乱暴だが、面白い着眼点ではあるな。夫婦の会話が減ったかどうかまではわからないが、投票の重要性が薄れているということはいえそうだ。3点くらいはあげてもいいぞ。
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まずは選挙の投票率が減った理由を考えてもらいました。
いきなり記述させると、この程度しか思いつかないのは仕方がありません。普段の講座でもこんなものですね。
それでもがんばって書くことが大切です。
さて、ここから先は、投票率が下がった原因を皆で議論してもらいます。
そのうえで、投票率が下がるとどんな問題が発生するのかについて記述してもらうことになります。