
※この記事の初出は2024.06.18です。2025.11.13にUPDATEし有料記事化しました
今回のロジカルライティングの授業テーマは「ラーメン屋で儲けよう!」です。
例によって登場人物は麻布志望の3人組、タロウ・ワタル・ゲンタ(仮名)です。実際の生徒・授業ではなく、過去の授業を再構成したものです。
ゲンタ:先生、教えてほしいんだけど。
私:なんだ?
ゲンタ:ラーメン屋を開くのに1000万円以上かかるって言ってたよね。いったい何でそんなにお金がかかるのか、いくら考えてもわからないんだ。
私:ラーメン屋を開く夢を捨ててなかったんだね。
タロウ:僕も知りたいよ。
ワタル:僕も。
私:よしわかった。将来の皆の夢をかなえるために、皆で考えてみよう。
ラーメン屋を開くにはいくらかかる?
私:まず、ゲンタ、どこまで考えた?
ゲンタ:ええと、まずお店が必要だよね。なるべく便利そうなところを借りるだろ。
私:どこに?
ゲンタ:どこでもいいよ、駅前なら。
タロウ:場所は大事だよ。だってさ、行列ができるようなラーメン屋さんに囲まれたらまずいだろ。
ワタル:それにどれくらいの広さのお店にするの?
ゲンタ:それも決めてなかった。
ワタル;それじゃあ僕たちのラーメン屋さんがうまくいくわけないじゃないか?
私:僕たち?
ワタル:どうせ考えるなら真剣にやらなきゃ。
ゲンタ:なんかごめん。
ワタル:先生、ちょっとPC貸して。あとプリンターも。さて、まずはお店の種類を考えよう。
ゲンタ:種類って?
ワタル:ほら、大きな道路に面していて駐車場が広いラーメン屋さんもあるし、ショッピングモールの中にあるお店もあるし、赤坂とか銀座とかの高級そうなラーメン屋さんもあるし、屋台のラーメン屋さんだってあるじゃないか。
タロウ:僕は、普通のラーメン屋さんがいいな。自分たちの住んでいる駅前にあるような、ちょっとお昼を食べるのに便利そうな。
ゲンタ:僕も。
ワタル:よし、それじゃあ東横線にしよう。
ゲンタ:なんで?
ワタル:なんか好きなんだよ、東横線って。井の頭線も好きなんだけど。それで駅は自由が丘がいいと思うんだ。
ゲンタ:なんで?
ワタル:この前遊びに行ったんだけど、もうびっくりするくらい人がいっぱい歩いてたよ。それでも、渋谷みたいにすさまじい人混みってわけじゃないから、ちょうどよいかなって。若い人が大勢いたし。
タロウ:自由が丘なら、僕らが目指してる麻布にも近いから、ちょうどいいかもしれないね。よし、自由が丘にしよう。ワタル、ネットで調べてみて。
ワタル:どれどれ。不動産屋さんのサイトを見てみるね。あ、これなんかどう? 奥沢と自由が丘の間で、新築のビルの1階だって。ほら、写真見てみて。
ゲンタ:ああ、きれいなビルだね。
タロウ:ここにしようよ。で、広さが約20坪だって。この坪って単位よくわからないんだよね。どうして㎡にしないのかな?
私:1坪は3.3㎡だ。
タロウ:ずいぶん中途半端だね。
私:でも、坪って単位は便利だぞ。畳2枚分がちょうど1坪なんだ。
タロウ:へえ。じゃあ、10畳の部屋だと5坪ってこと。
ゲンタ:それならかえって㎡よりわかりやすいかもしれない。で、このビルの部屋は20坪ってことは、40畳か。広いじゃないか。ここにしようよ。
ワタル:月60万円だってさ。これ高いのかな、それとも安い? 僕たちの金銭感覚だとわからないよ。
タロウ:他のところと比べてみたら?
ワタル:駅にもう少し近いと、面積はここより狭い16坪で66万円ってなってるから、まあだいたいこんなものじゃないのかな。
タロウ:じゃあここに決めよう。
ゲンタ:それで、よくわからないのが、この敷金と保証金と礼金ってものなんだけど。
私:ああ、敷金と保証金っていうのはだいたい同じようなもので、部屋を借りるときに、貸主、つまり家主さんに預けるお金だよ。
ゲンタ:預けるってことは、あとで返してもらえるの?
私:そうだ。部屋をクリーニングする費用を引いて、残りが退去するときに返してもらえる。それから礼金っていうのは、家主に払う手数料みたいなもので、これは返ってはこない。
ゲンタ:じゃあ、保証金6か月、礼金2か月ってことは、60万円×8,つまり480万円を最初に用意しなくちゃだめなんだね。
私:他にも、仲介手数料として1か月分を不動産屋さんへ、それから家賃の2か月分を先に前払いする場合が多いぞ。
ゲンタ:じゃあ、さらに180万円で、これで660万円だね。
ワタル:でも、写真見るとただのコンクリートの部屋だよ。これをラーメン屋さんにするのにはいくらかかるのかな?
私:調べてごらん。
タロウ:ええと、ラーメン屋、内装工事、これで検索するよ。なるほど、坪あたり30万円から50万円ってかいてあるよ。
ワタル:あんまり安っぽい雰囲気にはしたくないから、50万かかるとして、20坪だから1000万円だね。
ゲンタ:それから、キッチンだね。大きな冷蔵庫とか大きなコンロとか。ネットでみると、だいたい200~250万円かかるんだって。
ワタル:それから椅子だよね。いくつ必要?
タロウ:ここを見ると、だいたい30%は厨房スペースだって。それから1坪に2席ってあるよ。だから、6坪が厨房で、14坪がお客さんスペースだから、28席ってことじゃない?
ゲンタ:でもさ、僕きらいなんだよね、狭い席って。隣の人とひじがぶつかりそうなの。
タロウ:わかる! それに厨房が狭いのも嫌だよね。よし、それじゃあ20席にしようよ。全部カウンターでいいよね。
ワタル:そうだね。よくわかんないけど、1つ2万円くらいとして、40万円だね。
ゲンタ:あとお皿とか丼とか。それから鍋も必要だよ。
タロウ:もう細かすぎてよくわかんないから、全部まとめて100万円にしといたら?
ゲンタ:それでいくらになってる?
ワタル:お店借りるのに660万、内装工事に1000万、椅子に40万、食器に100万、これで1800万円。
ゲンタ:なるほど。だからラーメン店開くのには1000万円はかかるっていってたんだね。僕たちのお店は、もう1800万円もかかってるよ。
ゲンタ:おしゃれなお店だからね。
タロウ:それで、この前計算したラーメン屋さんは1日に90杯売れたよね、10席で。だから、こんどはその2倍の席数だから一日180杯売れるってことになるね。1杯1000円として、原価が30%だから、700円×180=126000円が毎日儲かるってことになるね。1か月だと378万円だよ。
人件費の問題
ワタル:ねえ、僕たち3人が働くとして、他に人いらないのかな?
ゲンタ:それは僕が昨日偵察してきた。
タロウ:すごい!
ゲンタ:いや、家族でラーメン食べに行っただけなんだけどね。そこはカウンターに18席あったんだ。それで、数えてたんだけど、厨房には4人いたよ。
タロウ:4人も!
ゲンタ:うん。メインで作ってる人は二人いて、あとは奥のほうで食器洗ったり、何か刻んだりしてる人がいた。だから考えたんだけど、ぼくたち以外にあと4人雇えば、朝担当が3人、夜担当が3人にできるかなって。それで1人が1日ずつ休めるよ。
ワタル:1人の月給が40万円として、4人雇うと160万円か。378万円から160万円引くと、218万円だね。
私:光熱費は?
タロウ:そうか。光熱費も調べないと。ああ、30万円から40万円くらいらしいよ。
ゲンタ:他にも割りばしとかゴミ袋とか細かい出費がありそうだね。
ワタル:あ、家賃忘れてた。
ワタル:じゃあそれも引いて。そうすると、105万円のこったよ。それを3人で分けると、35万円だね。まあ悪くはないと思うけど。
タロウ:週1日しか休めてないけどね。
ゲンタ:夏休みもないけどね。
一同:ううむ。
利益を増やすためには?
私:どうだ、うまくいきそうか?
タロウ:それがさ、なんだかあんまりもうかりそうもないんだよ。
私:どれどれ。なるほどな。月収35万円で休みが週1日か。
ゲンタ:夏休みも正月休みもないんだよ。これじゃあやる気がわかないよね。
私:確かにな。最近は大卒初任給でも35万円くらい支払う企業がいくつもあるからな。
ワタル:どこ?
私:建設業界や運輸業界かな。人出不足だからね。あとはIT関連とか、金融関連かな。そうだ、ユニクロもそれくらいになったと話題になってたよl
ワタル:僕、ラーメン屋あきらめてそっちにしようかな。
タロウ:この裏切り者!
ゲンタ:まあそういうなよ。それより、もっと利益を上げられる方法を考えればいいんだよ。
タロウ:どうやって?
私:まずはシンプルに考えてみるんだ。結局のところ、利益って何だ?
ゲンタ:ええと、収入から支出を引いた数字。
私:その通りだな。この場合の収入は何だ?
タロウ:それはラーメンの売り上げだよ。
私:それで支出は?
タロウ:それはいっぱいあるよ。原材料費とか人件費とか光熱費とか、家賃とか。
ゲンタ:あと割りばしとかゴミ袋とか細かいやつ。
タロウ:あ、ゲンタ戻ってきた。ユニクロに行くんじゃなかったの?
ゲンタ:もう少しラーメン屋で頑張ってみるよ。
私:利益を上げるやりかたはシンプルだ。収入を増やし、支出を減らす。
タロウ:単純だね。
ゲンタ:それじゃあまずは収入を増やすことを考えてみようよ。
タロウ:値上げしたらどうだろう? 1杯1000円を1200円にするんだよ。たちまち売り上げ2割アップだよ!
ゲンタ:それだとお客さんが減らないかな?
私:ラーメンでは、長年1000円の壁という言葉が言われていたんだ。
ワタル:1000円の壁? もしかして1000円を超えると売れなくなるとか?
私:そうだ。やっぱりラーメンは庶民の食べ物だからな。一食で1000円を超えると、庶民感覚としては「高いから止めよう」となってしまうんだね。
タロウ:そうか。1200円じゃ無理か。
ゲンタ:でもさ、僕が家族でたまに食べに行くラーメン屋さんは、たしか一杯1300円くらいだったと思うよ。
タロウ:高っ! それじゃあ売れないだろ。ゲンタくらいお金持ちならいいとしてさ。
ゲンタ:別にうちはお金持ちじゃないよ。でもたしかに高いけど、とっても美味しいんだよ。だからいつもお客さんが行列してるよ。
ワタル:なるほどね。高くても売れるけれど、それなりの味じゃないとだめなだね。
私:たしかに最近では1000円の壁は壊れつつあると言われているね。美味しいラーメンなら1000円以上でも売れるんだ。
タロウ:美味しく作るっていってもなあ。作るの僕たちだろ? それは一所懸命頑張るけど、評判になる味まで作れるかな?
ワタル:いいこと思いついたよ。高級食材使ったらどうだろう?
タロウ:高級食材って?
ワタル:たとえば、北海道産小麦粉の麺に、鹿児島黒豚のチャーシューに、ってさ。
タロウ:それはいいけど、原材料費がスゴイことになりそうだよ。利益が減るだろ。
ワタル:そうか。そうだ、それならいっそ、突き抜けたらどうだろう?
タロウ:突き抜けるって、何を? 値段?
ワタル:そうだよ。たとえば、いくらが山盛り載っている「いくらラーメン」とかどう?
私:それはいったいいくらなんだ?
一同:・・・・・。
ワタル:先生、言わずにはいられなかったんだね。
私:ごめん、つい。
ワタル:あとは、カニが丸ごと一匹載っているかにラーメンとか、キャビアが乗ってるキャビアラーメンとか。
タロウ:それって美味しいの?
ワタル:そんなのわかんないけど、まずくはならないだろ?
ゲンタ:それで値段は?
ワタル:一杯3000円とか5000円とかじゃないかな。
タロウ:高っ! そんなの頼む人いないよ!
ワタル:そこが作戦なんだよ。一日に数杯だけでもいいんだ。だけど、インパクトがあるから絶対話題になるだろ? それに最近だったら、SNSに写真上げてくれる人が絶対いるはずだよ。そうしたら話題になるじゃないか。
タロウ:なるほど。凄い作戦だね。
ワタル:だろ? それでさ、実は普通のラーメンは一杯1300円で売るんだよ。さすがに3000円や5000円のラーメンの値段見た後だと、安く思えるじゃないか。
ゲンタ:ワタルってそんな人間だったんだ。
私:別に普通の戦略だと思うぞ。実際にそういう商売のやり方は普通だからな。それを「アンカリング効果」というんだ。最初に見せられた価格が基準、つまりアンカーとなって、その後の判断が影響されるという心理的現象のことんなんだな。
タロウ:それじゃあ、価格はワタルの作戦でいくとして、次は支出、つまりコストを減らすことを考えようよ。
ゲンタ:まず家賃じゃないかなあ。もっと安いところに店を出すのはどう?
タロウ:それもそうだけど。それだと駅前は難しいよね。あんまり駅から遠いとお客さんが来てくれないよ。
ゲンタ:そうか。でも、駅から遠い住宅街なのに混雑している店ってあるよね。
タロウ:それは有名店だろ?
ワタル:ふふ。僕に作戦があるよ。
タロウ:うわ、期待できそう。
ワタル:名付けてコバンザメ作戦。
タロウ:コバンザメ? あの、大きな魚にへばりついて餌のおこぼれもらってる?
ワタル:そう。ゲンタが言うように、駅から離れてるのに行列が絶えない人気店ってあるよね。そういう店のすぐ近くに僕たちの店を開くんだよ。
ゲンタ:それって逆効果じゃないか。お客さんを人気店にとられるだけだよ。
ワタル:それがそうじゃないんだな。いくらラーメンが好きでも、1時間も2時間も行列して待ってまで食べたくない人だって大勢いると思うんだ。噂になってたから来てみたけれど、凄い行列で2時間待ちと聞かされた。これじゃあ並ぶのあきらめるか。でもラーメン食べたかったよなあ。そう思いながら帰ろうとすると、一軒のラーメン屋さんが目にとまった。ま、ここで手をうつか。とりあえずラーメン食べられるだけでいいよ。そういうお客さんを集めるのが狙いさ。
タロウ:うわ! なんていうか、せこいというか。
ゲンタ:ワタルってそういう人だったんだ。
私:ワタルの作戦もありだね。実際に、同じ種類の店が集まることで集客が増すということもあるんだ。先生も行列が大嫌いだから、ワタルの作戦はいいと思うよ。
ワタル:ほらね。
タロウ:それじゃあワタルのコバンザメ作戦を採用ということで。あとは何を削ろうか?
タロウ:やっぱり人件費が大きいね。
ゲンタ:人件費をどう削るかを考えよう。
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※ここまでの話でも、ラーメン屋を開くビジネスプランには十分考えてきたと思います。この後は、人件費削減の話題から、さらない外国人労働者問題へと発展します。