
※この記事の初出は2024.02.28です。2025.11.09にUPDATEし、有料化しました。
私が実践しているロジカルライティングの実践例をご紹介します。
前回同様、実際の生徒を登場させるわけにはいきませんので、過去の授業を再構成した、授業展開のモデルケース、ヴァーチャル授業と思ってください。
【生徒】・・・・麻布中学を志望する生徒3名(タロウ・ワタル・ゲンタ)
【問題提起】
私:今日はボランティアについて考えてみよう。みんなはボランティアって何かわかるかな?
全員:当然!
私:なるほど。ではワタル、説明してくれ。
ワタル:ええと、ボランティアっていうのは、困っている人を助けることです。
私:他に付け加える人は?
タロウ:タダでだよ!
私:そうだね。他には?
ワタル:発展途上国でやるんじゃないかな。
タロウ:震災のボランティアだってあるよ。
私:整理しよう。皆の考えとしては、ボランティアっていうのは「困っている人を無償で助ける」、これでいいかな?
(ワタル・タロウ、うなずく)
ゲンタ:ちょっと待って。大阪万博のボランティアっていうのがあったよね。あれって、別に困っている人を助けるものじゃなかったじゃないか。
ワタル:そうか。万博って、見たい人たちが勝手に集まるだけだから、別に助けてあげる必要なんか無いものね。
タロウ:でも、日本語がわからなくて困ってる人に通訳してあげたり、案内してあげたりするのにボランティアは必要じゃないか?
ゲンタ:そうかなあ? 会場の案内図には英語だって書いてあるはずだし、そもそも自分の意志で来るんだから、手伝う必要なんてどこにもないよ。
タロウ:だけどさ、せっかく日本に来てくれたんだから、気持ちよく過ごしてほしいじゃないか。
ゲンタ:別に無理に気持ちよくする必要はないと思うんだ。それは僕だって、道に迷っている外国の人を見かけたら、英語がわからなくたって、手伝ってあげようって思うよ。でもそれは別にボランティアじゃないよね。ただの親切だし。それじゃあだめなの?
ワタル:確かに。大阪万博では、2万人とか3万人ものボランティアを募集したってニュースになってたけど、それってもはやボランティアっていうより、ただのアルバイト募集じゃないの?
ゲンタ:そういえば、僕の親戚のお兄さんも、万博ボランティアに応募したけど落とされたって言ってたよ。せっかくやる気があるのに落とすなんて、そんなボランティアってありなのかな?
ワタル:ねえ、そのお兄さん、やっぱりお金が目当てで応募したの?
ゲンタ:違うよ。交通費で2000円くらいもらえるらしかったけど、あくまでもボランティアだから、お金はもらえないって言ってた。
ワタル:それじゃあ、ただのタダ働きアルバイト募集と同じじゃないか。ねえ先生、そんなのいいの?
私:みんないいところに気が付いたね。まさにボランティアというものについての本質にせまる議論だな。 ボランティアと労働の違いは、まず有償か無償かというところにある。お金がもらえるかどうかだね。
ゲンタ:それじゃあ、万博の通訳だって、通訳アルバイトを募集すれば労働だけど、まったく同じ仕事でも、タダでやってもらえばボランティアってこと?
私:そうなるな。
タロウ:なんだか変だよね。それってほら、「やりがい搾取」っていうんじゃなかったっけ?
私:難しい言葉をよく知ってたな。
ワタル:やりがい搾取って何?
タロウ:ブラック企業で見られるんだよね?
ワタル:ブラック企業って?
私:簡単にいうと、労働者にきちんとお金を払わずに働かせる企業のことだ。社員のやる気を利用して、お金を払わずに残業させたり、自宅で仕事をさせるので、「やりがい搾取」と呼ばれるんだね。
ワタル:それってひどいね。お金をもらえないのに仕事する人なんかいるの?
私:そうだな。例えば、家具工場で椅子を作っている人がいるとするだろ。今日中に椅子を3脚作る仕事をまかされたんだ。そこで朝の9時から一所懸命仕事をして、5時までに3脚の椅子を完成させた。これで家に帰ればよかったんだが、この人は椅子の出来栄えに納得いかなかったんだね。
ワタル:がたがたするとか?
私:そうではない。製品としてはきちんと出来上がっていた。でも、もうすこし木の表面を丁寧に磨いた方が綺麗に見えるし、塗装だって、あと2回塗ってあげれば、より丈夫に仕上がるんだ。だから、この人は、夜の10時まで仕事場に残って作業を続けた。
タロウ:残業代もらえないの?
私:あくまでも工場としては、5時に帰るように言ってあったからね。これはこの人が勝手に残ってやった仕事だからお金は出なかった。
ワタル:なんだかおかしな話だね。それでどうなったの?
私:椅子の評判はとても良かった。椅子工場もお客さんから感謝されたし、それを聞いたこの人もとても嬉しかったんだ。やっぱり残って作業してよかったなって。こうして、この人のやりがいを搾取して工場は売上を伸ばすことになる。これが「やりがい搾取」というものなんだね。
ゲンタ:なるほどねえ。そんな話って、いくらでもありそうだよね。僕の学校の先生も、遅くまで学校で仕事をしているって言ってたよ。僕たちのテストの採点をしたり、プリントを作ったりしてるんだ。それもやりがい搾取なんだろうね。
私:たぶんね。学校は、やりがい搾取が横行している職場なんだよ。
タロウ:それじゃあ、ボランティアってやりがい搾取なの?
私:もちろん違う、といいたいところだが、そういう側面も否定できないな。お金を支払って人を雇うべき場面で、人を雇う替わりにボランティアをただ働きさせようとすれば、それはやりがい搾取といっていいだろう。
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