中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】教師あるある:教え子との偶然の再会(※2024.11.26加筆修正)

※この記事の初出は2023.12.06です。2024.11.26にUPDATEしました。

 

長年この仕事をしていますと、元教え子がいろいろなところにいるものです。たまたま仕事上のお付き合いで知り合った人が実は教え子だったとか、あるいは向こうから積極的に名刺を持って訪ねてくる場合もあります。また、連絡は取りあってはいませんが、政治の世界に進んだ者や芸能の道に進んだ者も。元気な姿をテレビで見かける者もいます。

今回はそんな話をさせてください。

 

先生、久しぶり!

外でばったりと出会って声をかけてくる者もたまにいます。制服姿で電車内で声をかけてくれるような場合はわかりやすいのですが、成人したあとに出会っても思い出すのには苦労します。私の記憶力が弱いのかとも思うのですが、知人の教師に聞くと皆同様のことを言っていますね。

 

以前は、教師たる者、教え子の顔を忘れるなどもってのほか!と思っていました。

だから、会話をしながら必死で思い出そうとしたものです。

 

「先生!」

「おお、久しぶりだね。今日はどうしたの?」

「これから大学です」

「そうなんだ。大学はどこへ通ってるのかな?」

「〇〇大学です」

「それは優秀だね。今1年生だっけ?」

「2年生になります」

「そうか、もうそんなになるのか」

 

ここまで、まったく思い出せていません。

でも、〇〇大学に進学したということは、優秀な生徒には間違いないでしょう。ということは、A中学かB中学か。

 

「大学で小学生時代の友達と会ったりした?」

「あ、この前C君とキャンパスで会いました。あとDさんもたまに見かけます。」

 

C君とDさんと同じ時期の生徒か。ええと、C君は覚えていないけど、Dさんなら微かに記憶があるぞ。

 

「Dさんと中学同じだったかな?」

「残念ながら違いますよ。Dさんのほうが頭良かったから」

 

ということは。DさんがA中学だろうから、B中学か?

 

「家から大学までけっこう時間かかるだろ」

「でも、中高時代より楽です。時間は同じくらいだけど、電車が空いているので」

 

ああ。この子の住んでいるであろうあたりから大学と中高が逆方向なのか。ということはやはりB中学。

 

「B中学はどうだった? 他に誰か仲良くしてた?」

「ええ、すごく楽しかったです。Eさんとは、よく先生の話で盛り上がってたんですよ」

 

あ! Eさんが一緒か。Eさんはおもしろい子だったなあ。あ! いつもEと一緒にいたから、

 

「Fさんも、大学で勉強頑張ってな」

「ええ。先生もお元気で」

 

ギリギリセーフ!

何とか電車が目的地に着く前に思い出せました。

 

もうこんな綱渡りばかりです。

 

保護者との遭遇

 

教え子本人以外にも、保護者の方と遭遇することも多いです。こちらはさらに難易度が上がります。

先方は、懐かしそうに話しかけてくれるのですが、生徒本人を思いだすのに苦労しているくらいですから、お母さまを見ただけで思い出すのは無理というものです。

 

「先生!」

見覚えのない女性から声をかけられました。親し気な態度から、教え子の保護者、それも何年も前の生徒であることは明らかです。

家族と一緒にショッピングモールを歩いていたときのことでした。

この方は話好きのようで、一方的に話続けるので、こちらからヒントを探り出す必要がなくて助かります。

「もうこのpeter先生には本当にお世話になって」

「そうなんですか」

「凄い先生なんですよ!」

よくわかりませんが、家族に私の自慢をしています。

しばらく立ち話をしていれば、少しずつ思い出します。名前や成績など。ただ、どんな顔だったかまではぼんやりとしか思い出せません。

お母さまによると、現在お子さんは、演劇関係で活躍しているというのです。話の8割は、子どもの自慢話でした。まあこうして教え子が活躍している話はいいものですね。

 

文化祭での出来事

とある私立中高一貫校の文化祭に行ってきたときの話です。

文化祭にはだいぶ足が遠のいていたのですが、管弦楽部に入っている教え子のたっての願いとあって、久々に足を運んでみたのです。中高生のオーケストラなど大したレベルではないだろうと思っていたら、なかなか聞かせるオーケストラで、とても感動してしまいました。大学への進学実績も相当なレベルの学校ですので、皆勉強で忙しいはず。塾に通っている生徒も多いことでしょう。楽器の練習をする暇などないだろうに、限られた時間の中で皆頑張ったのですね。とても素晴らしかったのです。中高生が体のサイズより大きそうなコントラバスを必死に弾いているのを見ると、なんだか涙がにじんできそうになりました。最近涙もろいのです。

さて、久々のオーケストラに満足して学校内をぶらぶらしていると、「先生!」と呼び止められました。まあ、どの学校に行っても教え子がいますので、そのこと自体は驚くことではありません。振り返ると、小学生のお子さんを連れたお母さまでした。

「松平(仮名)です! よかった、先生にお会いしたかったのです!」

どの教え子のお母様かな? 

「ああ、きっと誰かに会うだろうとは思っていたのですが。」

「あのときは本当にお世話になりました。」

「今日はどうしてこちらに?」

「母校に子どもを連れてきたのです。」

こうして話をしながら、私の頭はフル回転しています。松平、松平・・・・。たしかにその名前の生徒を何人か指導したことはあるのですが、いったいいつ頃の話なのか、皆目思い出せないのです。一緒に連れてこられている子が小学4・5年生のようなので、教えていた上の子が高校生としてもそんなに昔のことではないはずなのですが。母校ということは、母子2代でこの学校なのか。

こちらが必死で思い出そうとしているのにはおかまいなく、お母さまの話は続きます。

「上の子は今度6年生で、受験なんですよ。あの時一緒だった〇〇から先生のことを聞いて。」

(上の子が6年生? ということは、3人兄弟か?)

「そうですか。ところで、上のお子さんは今何年生になりますかね?」

「・・・。それで、△△君とは今でも連絡しあっていて。」

「もう何年になりますかね。お子さんはお元気ですか。」

「・・・。」

どうにも会話がかみ合わないのですね。そんな会話を交わしていて、やっと気が付きました。

あっ! このお母さん本人が、教え子だった!

いやあ、何年たったのでしょうかね、面影ゼロですから、思い出せないのも無理はありません。

中高生の教え子や、そのお母さまにばったり出会うことまでは想定内でしたが、まさか教え子本人が親となって登場することまでは想定外でした。

今後、ますますこうしたハプニングが多くなるのでしょう。

やっぱり文化祭に行くのは控えたほうがよさそうです。

 

 

知人の学校の先生にうかがうと、何年たっても教え子の名前は忘れないそうです。

凄い!

やはり私とは記憶力が違うのでしょうか。

でも、過ごした時間が違うのです。

塾ではせいぜい週1回か2回で数時間ずつしか生徒と会いません。しかも毎年生徒は入れ替わっていきます。

小学校にしても中高にしても、生徒とともに過ごす時間が私などよりはるかに長いですから。

 

言い訳にしか聞こえないですね。