中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

栄光ゼミナールの評価と実績(2024.10.05加筆修正)

※この記事の初出は2023.11.01です。2024.10.15にUPDATEしました。

 

さて、中学受験の塾には、今までとりあげた四谷大塚日能研サピックス早稲田アカデミー・ena以外にもたくさんの塾があります。

私もさすがに全ての塾について詳しいわけではありませんが、内情について多少なりとも知っている塾をいくつかとりあげてみたいと思います。

今回は栄光ゼミナールです。

※この塾を持ち上げる意図も貶める意図もありません。私の主観にもとづく私見ですのでご容赦ください。

 

成り立ち

栄光ゼミナールは、創業者の北山 雅史氏が大学時代に開いた塾を母体としています。これは塾の創業としてはよくある話ですね。

やがて1980年に栄光ゼミナールを創立しました。

その後教材会社を作り、個別指導を始め、教室数も順調に拡大します。株式も上場しました。

しかし、その後の経緯が少々複雑です。

2008年に北山氏が経営から退き、翌年にはZ会と業務提携をします。

2010年には創業者北山氏から株を取得し佐鳴予備校筆頭株主となるものの、翌年には進学会に株が売却されます。

結局、2015年にZ会ホールディングスが全株式を取得し子会社化され、現在にいたります。

ここに至るまでに様々な噂も流れていましたが、それは本題ではありません。今は、Z会の子会社であることだけ知っていれば十分です。

 

教室数

特徴としてあげられるのは、その教室数の多さでしょう。

数えてみると、集団指導の「栄光ゼミナール」ブランドで1都3県に196教室もあります。小規模教室を面で展開する戦略をとっているのですね。

これは「通いやすさ」という点から非常に便利です。

 

合格実績

最初のころは勢いもありました。難関校の合格実績を市進とともに四谷大塚日能研等と競り合っていた時代もあったのです。しかし、その実績はみるみる低下していきます。躍進するSAPIX早稲田アカデミーに食われたかんじですかね。

HPによると、桜蔭2名、女子学院2名、雙葉4名となっていました。男子はどうかと見たら、開成16名、麻布14名、武蔵18名、筑駒9名と、こちらのほうがよいですね。

もっとも、HPには小さな文字でこう書かれています。「・・・栄光ゼミナール・栄光の個別ビザビ・Z会エクタス栄光ゼミナール・E-style・EIKOH LiNKSTUDYに在籍した生徒を集計・・・」

EIKOH LiNKSTUDYというのはオンライン塾、E-styleは都立中高一貫校対策塾です。そしてZ会エクタス」というのが、最近立ち上げた最難関校実績かせぎのための別ブランドなのです。

エクタスのHPの合格実績は、「開成16名、麻布12名、武蔵17名、桜蔭2名、女子学院2名、雙葉4名、筑駒9名」となっていました。この数字が栄光ゼミナールの合格実績に加算されているのですから、栄光ゼミナール単体の実際の合格実績は

「開成0名、麻布2名、武蔵1名、桜蔭0名、女子学院0名、雙葉0名、筑駒0名」です。

もっとも個別ビザビは合格実績を公表していませんので、どこまでが栄光ゼミナール本体のみの実績なのかは不明です

こうしてみると、もはや最難関校を目指して通う塾ではないといえるでしょう。

Z会エクタス

さて、「エクタス」の実績については、HPの発表を鵜呑みにするならば、「筑駒・御三家・駒東中70名合格(6教室125名在籍)」となっていますので、これが本当なら驚異的な実績といえるでしょう。

合格率56%! とアピールしていますが、3日校の筑駒を混ぜていますので不正確です。2月1日のみ入試の学校で計算すると、47%(合格者/在籍者)となります。

それでもすごい実績ではあります。

 

筑駒 9

開成 16

麻布 12

武蔵 17

駒東 8

桜蔭 2

女子学院 2

雙葉 4  

灘 6

渋谷幕張 21

聖光 5

栄光 7

豊島岡 6 

ただし、その合格実績をアピールするHPには、ここにあげたわずか13の学校しか出ていません。昨年までには表示されていた、「その他多数合格しています」という文言すらも消えています。

 

実は、私はこうした実績の公表の仕方は好きではありません。がんばって受験して合格した学校を塾から否定されているのも同然だからです。

子どもにしてみれば、自分の進学校「塾の実績にもならない学校」扱いされるのはたまらない気分ですよね。栄光ゼミナール本体の合格実績はたぶん全ての合格校が掲載されているのとは大違いです。

こうした細かいところにその塾の本質が見えるというのが私の持論です。

 

ところで、エクタスに入塾するためには、まず個別相談・体験授業を経て、

1.保護者の方の、エクタスに通わせたいという判断
2.各教科担当者の授業形式・内容・スピードなどがお子さまに適切かどうかの判断
3.お子さまの「エクタスで学びたい」という意欲


の3点により入塾が決まるそうです。

テストの点数のような客観的基準ではないのですね。

 

このように難関校に特化した別ブランドを立ち上げた塾は他にもあります。

早稲田アカデミー →→ 特別校舎 ExiV

          →→ 中学受験SPICA

◆STEP →→ Hi-STEP(ハイステップ)

湘南ゼミナール →→ SHOZEMIアルファ

◆TOMAS →→ specTOMAS

 

優秀な生徒のみ集めて授業を行うのは、経営的には合理的な判断だと思います。SPISCAなど、自由が丘にお金のかかった内装の特別な教室をつくっていますね。

しかし、「普通の」校舎に通う生徒をどれだけ大切にしてくれるのか、そこをきちんと見極める必要があると思います。

 

 

 

教材

 

さて、栄光ゼミナールの特徴としては、教材があげられます。Z会子会社の、「エデュケーショナル・ネットワーク」という塾向け専用教材会社の教材を導入しています。塾にとって教材は生命線ですが、オリジナル開発するのは多大な労力・費用が必要だと前にも何度か書きました。だから、こうして別の会社(グループ企業ですが)が作ってくれたテキストをそのまま導入するというのは、自前の教材開発能力のない塾にとっては理にかなっています。

 

向く生徒

 

栄光ゼミナールに向くのは以下のような生徒でしょうか。

 

〇小規模・少人数の教室がよい

〇徒歩圏内の塾がよい

〇難関校は志望していない

Z会には信頼感がある

 

HPより、東京・神奈川で40名以上の合格人数の学校をみてみるとこんなかんじでした。(千葉・埼玉をのぞいたのは、多くの東京の受験生が「お試し」で受験するため、どの塾も千葉・埼玉の合格実績がとても多くなるため塾の力量が見えなくなるからです)

 

宝仙学園中    104

聖徳学園中    94
桜美林中    85
駒込中    70
日本工業大駒場中    67
武蔵野大学中    66
跡見学園中    64
かえつ有明中    64
三輪田学園中    60
多摩大聖ヶ丘中    56
実践女子学園中    55
品川翔英中    53
十文字中    52
淑徳中    51
足立学園中    50
東京都市大等々力中    50
郁文館中    49
共立女子中    49
安田学園中    49
大妻中野中    49
鶴見大附属中    48
中村中    48
東洋大京北中    47
トキワ松学園中    47
山脇学園中    47
関東学院中    46
八王子中    46
桐光学園中    46
帝京中    44
文化学園大杉並中    43
青稜中    43
東京電機大学中    43
日大第三中    42
高輪中    41
東京成徳大学中    41
江戸川女子中    40
日大第二中    40
日大豊山中    40

 

なにもすべての受験生が開成や桜蔭を目指すものでもありません。自分の実力で届く学校の中から、良い学校・合う学校を探すのが普通です。

もしお子さんが上記した学校を考えているのなら、この塾は選択肢として考えても良いと思うのです。