※この記事の初出は2023.10.31です。2024.10.11にUPDATEしました。
さて、中学受験の塾には、今までとりあげた四谷大塚・日能研・サピックス・早稲田アカデミー・ena以外にもたくさんの塾があります。
私もさすがに全ての塾について詳しいわけではありませんが、実情について多少なりとも知っている塾をいくつかとりあげてみたいと思います。
※あくまでも私の主観に基づく私見にすぎません。特定の塾を持ち上げる意図も貶める意図もありません。
グノーブルの成り立ち
先日、知人の小学生を持つ母親から言われました。
「やっぱり今は、サピックスよりグノーブルなんでしょ?」
なるほど。グノーブルもそう評価されるようになったのですね。
グノーブル設立の経緯について語るためには、SAPIX創立の経緯についても語る必要があります。けっこう複雑な話なのですが、そこが本題ではないので簡単に。
まず、TAPという難関校に抜群の合格実績を誇る塾がありました。TAP小学部(中学受験部門)とTAP中学部(高校受験部門)の2つの法人に分かれており、さらにその上に株式の大半を持つ理事長が別にいました。で、この理事長のやり方に反旗を翻し、小学部・中学部の代表取締役をはじめとした主要メンバーがごっそりと離脱して作った塾がSAPIXというわけです。1989年のことでした。
やがてSAPIX中学部が高校生の大学受験部門の「NUXUS」というブランドを立ち上げ、英語が専門の中山伸幸氏が代表となります。この中山氏が、SAPIX中学部と対立して2006年に離脱、グノーブルを作ったわけです。
中山氏が抜けたあとのサピックス中学部はやがて代ゼミに買収され、その後に小学部も続きます。やがて小学部の元社長がグノーブルに合流して2013年に中学受験部門を立ち上げることになります。この時、サピックス小学部から多くの教師が引き抜かれました。
その後のサピックス小学部の順調な成長ぶりを見ると、グノーブルに引き抜かれた教師の穴はそう大きくはなかったのかもしれません。SAPIXの分裂後にTAPが消滅したのとは対照的ですね。
こうしてみると、中学受験のグノーブルは、サピックス小学部の指導方針を踏襲していると思われます。そこに、大規模化してしまったサピックスにはないきめ細かさを付け加えている、そんなところではないでしょうか。
しかし、グノーブルの校舎数が14校舎にも増えてきた現在、きめ細かい指導に期待できるかは不明です。教材や教師についても、サピックスの進化版ならよいのですが、劣化版だと困りますので、冷静に見極めることが必要です。
ところで、中学受験のグノーブルは大学受験のグノーブルとは別物なのでご注意ください。大学受験部門はなかなか好調のようですね。中山氏はカリスマ的人気があると聞きます。中学受験部門に、そのようなカリスマ講師がいるのかどうかは聞こえてきませんが、中学受験は講師の実力だけでは何ともならない世界です。教材・テスト・カリキュラム・情報等の総合力で勝負する時代です。この情報という面では、グノーブルの規模ではまだまだこれからといえるでしょう。
合格実績
悪くないですね。いや、とても良いと思います。
卒業生689名
開成 11
麻布 24
武蔵 10
桜蔭 16
女子学院 13
雙葉 5
駒東 31
栄光 12
聖光 22
豊島岡 15
慶應普通部 10
慶應中等部 19
慶應湘南藤沢 7
渋谷渋谷 22
渋谷幕張 42
筑駒 8
卒業生数を公表しているところは立派です。合格者数も1名の学校まで公表していますので、「その他合格者多数」としている塾よりはよほど信憑性が高いと思います。
2月1日のみ入試を行う学校ー開成・麻布・武蔵・桜蔭・女子学院・雙葉・駒東・慶應普通部を合わせた人数は120名です。17.4%ということになりますね。
サピックスも見てみます。
卒業生 6436名
開成 262
麻布 182
武蔵 59
桜蔭 189
女子学院 131
雙葉 45
駒東 185
栄光 109
聖光 228
豊島岡 296
慶應普通部 113
慶應中等部 124
慶應湘南藤沢 42
渋谷渋谷 229
渋谷幕張 383
筑駒 98
こちらも同じように、2月1日のみ入試を行う学校ー開成・麻布・武蔵・桜蔭・女子学院・雙葉・駒東・慶應普通部を合わせた人数を計算すると、1166名でした。卒業生に占める割合は18.1%です。
あらためてサピックスの凄さが認識されます。
グノーブルの実績も驚異的なレベルには間違いありません。ただ、小規模塾ならもっと「合格率」が高くなってもいいと思うのです。
グノーブルを選ぶ場合
正直いって、サピックスとグノーブルのテキストや授業システム、コンセプトを見比べてみても、さほどの違いは感じられませんでした。
上にあげたのは、6年生の夏までの社会科のカリキュラムです。参考までに四谷大塚のものも載せました。
夏前までに全カリキュラムを修了し、夏以降入試問題の演習に入るというのは同じです。
あえていえば、グノーブルは地理の復習に6回とっていますので、その分歴史の復習と公民分野の学習が薄くなっています。
もし最寄り駅にサピックスでなくてグノーブルしかないのならそちらを選ぶべきでしょう。
もし最寄り駅にサピックスしか無いのなら、わざわざグノーブルを選ぶ意味はありません。近いほうが良いのです。
もし最寄り駅に両方ある場合は悩みますね。ただし、実績と教材・テスト・生徒数を考えると、わざわざサピックスでなくてグノーブルを選ぶ理由は無いと思います。
しかし、教室責任者の教師が良いと感じたなら、十分グノーブルを選ぶ理由になります。
とここまで書いてきて、改めてグノーブルの校舎展開を確認すると、見事にサピックスがある駅だけに進出していました。
某塾のように、授業曜日をずらしたコバンザメ商法ではなさそうなので、喧嘩を売っているのでしょうか?
中学受験塾の考えることは一緒ですから、同じ駅に複数の塾が出るのは当然といえば当然なのですね。
それにしても、設立わずか10年程度の塾がここまで成長できるというのは、元となっているサピックスのシステムやメソッドの優秀さを示しているということなのでしょうか。
個人的には、サピックスとは全く異なる新しいコンセプトの塾が登場して、サピックスの牙城を脅かしてほしいなどと考えてしまいます。
ただの野次馬根性です。