元SAPIX 中学受験のプロ peterの日記

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【中学入試】2025 学習院女子 帰国生入試 日本語作文


今回は、学習院女子帰国生入試の作文を見てみましょう。

 

あなたはどのような学校に通いたいですか。滞在国での経験をふまえて、あなたの通いたい理想の学校についてくわしく書きなさい。

 

きわめてシンプルな、学習院女子らしい問題です。

しかし、よく見ると、なかなか書きづらいテーマです。

 

例えばアメリカに滞在していたとしましょう。場所は、そうですね、サンフランシスコ郊外にでもしてみましょうか。幼稚園から小学校6年生の途中まで、西海岸の自由な雰囲気で育ちました。6年生の夏休み前に帰国し、いったん日本の小学校に編入しました。アメリカと日本の小学校は大きく違います。

そもそも教室環境が異なります。アメリカでは、少人数による、プレゼンテーションやプロジェクトベースの学習、グループ学習が中心でした。時間割も固定されておらず、教師の裁量によりフレキシブルに変更されます。とにかく自分の意見をはっきりと述べることが奨励され、教室内は活発な意見が飛び交うのが普通でした。習熟度別のクラスに応じた授業が行われ、やる気のある生徒はカリキュラムを超えて学ぶこともしばしばでした。とくに科学や数学、芸術にも力がそそがれていて、中学校で学ぶレベルの科学の実験をやりその成果を論文にまとめて表彰されたこともあったのです。

しかし、日本の小学校はすべてが違いました。まるで強制収容所にでも入れられたような気がして、のびのびとしていたアメリカの学校生活を懐かしんでばかりいたのです。

こんな状況でこの作文が出題されれば、どんな内容の作文になるかは容易に想像できますね。

おそらくは、アメリカの学校時代を思い起こし、そうした学校を「理想の学校」として書いてしまうことでしょう。

しかし、ここで見落とすわけにはいかない問題があります。

はたして「学習院女子」に、そのような雰囲気はあるのでしょうか?

 

学習院の源流は1847年に開講された京都御所前の学習所にあり、学習院女子中・高等科は、1885(明治18)年に設立された華族女学校が前身です。本校は設立当初から「磨く」ことを大切にし、「その時代にふさわしい知性と品性を身につけること」を掲げ、全人格的な陶冶を目指しています。「生徒はダイヤモンドの原石」です。そして、ダイヤモンドはダイヤモンドによって磨かれます。若葉萌ゆる年代である中学・高校時代に、「おのれにまさるよき友」を得ると同時に、友人にとっての「おのれにまさるよき友」となり、切磋琢磨しながら学校生活を送ります。

学校の公式HPに掲げられた教育方針はこうなっています。

実にもっともな方針ですね。これは古今東西、日本だろうがアメリカだろうが大切なことだと私には思えます。

そして、以下のような生徒を受け入れるとなっているのです。

御歌「金剛石 水は器」の教えに立ち、自己研鑽、切磋琢磨ができる生徒
「正直と思いやり」の指針のもと、自己を律し、友人と互いに敬いながら学校生活ができる生徒
「その時代にふさわしい知性と品性を身につける」との指針のもと、自らを高めていくことのできる生徒

「金剛石・水は器」とは、明治20年に昭憲皇太后より下賜された歌だそうです。

 

どう考えてみても、「個性の尊重・主体性の育成」を重視するアメリカの学校教育とは異なると思います。

もちろん、学習院女子においても、「ひろい視野」「たくましい創造力」「ゆたかな感受性」の育成は標榜されています。ただ、目的とするもの、そしてアプローチのやり方に大きな相違があるのです。

 

そう考えると、自分が戻りたいと願うアメリカの学校を「理想の学校」として書くだけでは、作文が高評価となるかどうかは微妙です。

 

しかし、だからといって「お世辞」まみれの作文も嫌ですね。

学習院女子の教育を理想のものとして持ち上げる作文。もしそんな作文を臆面もなく書く生徒がいたら、私なら教えたくはないかな。いや、むしろ、そこまで計算できる能力を高く評価するかもしれません。

しかし、入学試験でそんな冒険をするわけにはいきません。

 

そこで、この場合の無難なアドバイスをしましょう。

◆自己の学びにつながる学校

◆他者への思いやりが身につく学校

◆豊かな人間関係を育むことができる学校

この3点をあげるのです。

 

まず、「自己の学び」についてですが、学校なのですから、そこで自分を高めるよう努力するのは当たり前です。学びというものは一人でも可能ですが、良き指導者に恵まれると、その学びは大きく飛躍します。

「他者への思いやり」とは、社会貢献につながる考えです。学びの目的の一つは、社会に貢献できる人間になることにあります。しかし、小学生の段階で、「社会貢献」を口にするのは、少し背伸びしすぎですね。そこで、「他者への思いやり」の心を持てるようになる、これくらいのほうがよいのです。

「豊かな人間関係」とは、教師と生徒、そして生徒同士の人間関係のことですね。人間関係によって人は育ちます。中高生時代は、まさに豊かな人間関係を築く時期なのです。

これらは、学習院女子のHPに掲げられている通りですが、普遍的な考え方だと思います。

 

同じテーマの作文は他の学校でも出題されますので、日ごろからこれくらいは整理して考え、書けるようにしておくとよいでしょう。