
私は、ことあるごとに、「中学受験に塾は必須ではない」と説いてきました。
そして、そのことをまとめた本も出版しました。
しかし、やはり何人かの方から批判されたのです。
「そんなこと言ったって、現実的に塾に通わなければ駄目でしょ?」
「みんな塾に行っているじゃない」
「塾に行かなくても合格できるなんて一握りの天才・秀才の子だけ」
「そもそもお前は塾の人間だろう?」
最後の指摘はごもっともですが。
そうした塾・受験産業の内部事情を熟知している私だからこそ言えるのです。
中学受験に塾は必須ではありません。
- 1.小学校3年生までは自宅学習がベストの理由
- 2.時間の有効活用
- 3.塾の思惑に左右されない
- 4.やるべき教材は入手可能
- 5.塾の公開模試をペースメーカーとする
- 6.過去問演習に時間が使える
- 7.親の犠牲は必須
1.小学校3年生までは自宅学習がベストの理由
最近は低学年のうちから塾に通うのがスタンダードになりつつあるようですが、これは不要です。
低学年で学ぶ程度の内容なら、自宅でも十分に親が教えられるレベルだからです。
また、中学受験塾でも、低学年のカリキュラムやテキスト作成は難しいのです。中学受験をゴールとしたバックキャスティングの手法が使えないからですね。
とある塾(大手です)の3年生の社会科のカリキュラムを見て驚いたことがあります。先行して3年の社会科を始めていた、別の大手ライバル塾のカリキュラムをそのまま真似して(パクッた!)いたからです。たしかに先行塾の3年の社会科のカリキュラムはなかなか工夫がみられて面白いものでした。よく考え抜かれたカリキュラムだと思います。だからといって、そのままパクるとは、節操が無さすぎですね。
書店に行けば、低学年にやらせやすい教材などいくらでも手に入ります。
算数は計算練習、国語は漢字練習を日々のルーティンとして、そこに、算数ならパズル的な問題、国語なら良質な本を読ませることを付け加えればよいのです。
わざわざ時間とお金を費やして塾に行かせる意義はありません。
さらに、低学年のうちは、子ども一人で塾に行けないため、送迎が必須です。
家から歩いて行ける距離に評判の良い塾がある場合を除いては、低学年の通塾は不要だと考えます。
2.時間の有効活用
とにかく塾に通うと時間が無駄になるのです。往復の時間はもちろんですし、塾に行ってから授業が始まるまでの時間、授業に集中していない生徒を教師が指導している時間、すでに理解している問題の解説を聞く時間、自分が解き終わっているのに周りが解き終わるのを待つ時間、質問の順番を待つ時間・・・・・。
塾に通うことで得られるものが多いのも承知していますが、この時間の無駄ばかりは何ともならないですね。
とある小学校の日課表を確認してみました。
下校時間はこうなっています。
月・火・木・金・・・15:35
水・・・・・・・・・14:45
文科省から細かく時間数が規定されていますから、どこも似たようなものでしょう。
小学校から家までが15分程度だったとします。
週4日・・・15:50
週1日・・・15:00
ここから勉強が可能ということになりますね。実際にはクラブ活動や委員会、また帰宅してからおやつを食べる時間もあるでしょうけれど。
しかし、多くの塾のスタート時刻は、16:30から17:00くらいとなっています。
様々な地域の生徒を幅広く集めるためには、スタート時刻を早められないのです。
塾に行く前の隙間時間でどれだけ勉強できるかは不明ですね。落ち着かない学習は効率が悪そうです。
また、塾が終わって家に帰る時間が遅すぎます。22時近くなんてざらですから。
それから夕飯&入浴となると、睡眠時間に食い込みます。
子どもにとって健康な生活スタイルにならないのです。
もし塾に行かなければ、効率良く勉強時間を確保しながら早く寝ることもできるばかりか、食事時間も規則正しくできるのです。
3.塾の思惑に左右されない
残念ながら、良心的な塾・教師ばかりとは限りません。また、塾の利益確保のために、拘束時間が長かったり、夏期講習が毎日実施されたりもするのです。
さらに、志望校についても塾の思惑が前に出がちです。
「お子さんは〇〇中は受かりませんから受けないでください」
こう塾から言われて、涙ながらに相談に訪れた子を12月から預かったことがりました。2か月の特訓で、見事合格しましたね。この塾は、「合格率100%」を売り物にしている塾だったのです。したがって、合格できそうもない生徒に受験をあきらめさせる指導を行っていたのですね。私も義憤に駆られて指導に力が入りましたよ。
4.やるべき教材は入手可能
塾に行かないと手に入らない教材はそう多くはありません。今は、あらゆる教材が入手可能です。書店で入手できる教材だけでも、十分合格に必要な勉強はできるのです。
5.塾の公開模試をペースメーカーとする
まず、4年生の最初の模試を受験しましょう。それから、定期的に公開模試を受験します。それで点数がきちんと取れていれば、塾に通う必要が無いことを意味するのです。
この成績が明らかに下がってきて、家ではフォローができない、そう判断してから塾に通えばよいと思います。
6.過去問演習に時間が使える
合格のためには、6年生の後半から過去問演習をやらなくてはなりません。最低でも50本、できれば100本くらいは解いてほしい。ところが塾に通っているとそれができないのです。6年生になると通塾日数が増えるため、過去問を解いている時間がありません。
不安定な得点力のまま入試に臨む事態になりかねないのです。
7.親の犠牲は必須
塾に行かずに合格を目指す場合、親の犠牲は必須です。
具体的には、土日祝日の仕事が休みの日は、すべて子どもの勉強に付き添う必要があるのです。週末だけ開催される「家庭内塾」のようなものですね。
また、有給休暇も、子どもの小学校の休みに合わせて取得しなくてはなりません。
もちろん、入試問題を事前に親が解く必要もあるのです。
こうした犠牲を払いたくない方は、最初から塾に頼ったほうが楽でしょう。しかし、本気で親が子どもの中学受験に向き合うことで、塾に行かせるよりも大きな成果が得られると私は考えています。
まずはこの本を読んで欲しいと思います。その上で、ご家庭にフィットしたやり方を考えましょう。
